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創造性を高める経営
インタビュー:
インターナショナル・マネジメント・アンド・イノベーション・グループ
プレジデント M.ハートマン氏 Dr. Matthias Hartmann
聞き手:堀田佳男
世界経済は激震が走り、2009年を迎えてもその先には暗雲が立ち込めている。だが、いつの時代にあっても、事業の創造と新製品の開発は生き残りの要件であることに変わりはない。ヨーロッパを中心に企業の新事業開発などの経営支援を行うIMIG社のCEOハートマン氏に創造性を高める経営のあり方を聞く。
ドイツ企業にみるグローバル化成功のカギ
フューチャーマネジメントで世界進出に挑め (2)
ドイツの中小企業が海外で成功する秘訣
企業が海外進出するときの心得からお話しましょう。企業は製品の品質や製造過程を規格化してきました。しかし、ヒューマン・リソース・マネジメントやリーダーシップは、進出する国の文化に適応させる必要があります。人材やリーダーシップは地域ごとに柔軟性を持たなくてはなりません。
この点、多くのドイツ企業が国際化に成功しています。特徴的なのは、大企業だけでなく、中小企業の国際化がめざましいことです。社員150人レベルの中小企業がグローバル化に成功し、売上の50%以上を国外で上げている場合もあります。
小さな会社がなぜ国外で成功できるのでしょうか。1つのカギは、大企業により多くの点で柔軟性があるからです。さらに国外で成功している中小企業は、必ずその国の文化と市場を理解しています。その理解なしに成功はあり得ません。ですから、ドイツでは大企業が中小企業から学んだりしています。他国の市場に合わせられる柔軟性とスピードが重要なのです。
成功の2つ目のカギは、イノベーションへの高い意識です。ドイツ企業は世界が必要とする最新技術や革新的製品を産み続けています。世界市場でリードし続けられる技術革新がないと、国外での成功は約束されません。
3つ目が他国の文化に合わせたマネジメント方法の採用です。ドイツ国内のマネジメントが他国で通用するとは限らず、むしろ失敗する確立のほうが高いのです。他国の市場を熟知し、地域に適合したマネジメントを取り入れることで初めて事業の成功が見えてきます。頑迷な態度は失敗の元凶です。
わが社にアドバイスを求めてきたドイツ企業の話をしましょう。その企業は、世界市場に進出して2年で成功を収めたいとの希望でしたが、国内市場だけでしか事業を行った経験がありませんでした。その状況で、2年間でグローバル市場の成功は無理です。そこで段階的に1つずつ世界に飛び立つ準備を支援しました。
まず進出国を丹念に選択します。進出国が決まると、その国のどの市場に参入するかを検討し、製品の種類を慎重に絞り込みます。さらに地域の特性も理解する必要があります。こうした段階的なステップを踏んで初めて外国市場で成功できるのです。
あるとき、ドイツ市場に参入した米国企業がありましたが、ドイツでも自国と同じマネジメントで事業展開できると思ったため、失敗してしまいました。米国市場とヨーロッパ市場は違いますし、ドイツだけでもいくつもの地域差があるのです。
日本企業ではソニーやトヨタなど、世界市場で製品の製造・販売に成功しただけでなく、グローバル化にも成功している企業がたくさんあります。ところが、海外市場に進出できていない中堅・中小企業は、大手企業の成功を真似しようとしてもうまくいかないことが多々あります。しかし、たとえば中小企業のほうが、国外市場での成功率が高いドイツのように、これからは日本でも同じ現象が起こる可能性があると思っています。コンサルティング企業にとって、日本のビジネス支援と訓練はこれからです。これまで社員200人前後の企業の多くは、最初から海外市場をあきらめ、コンサルタント料を支払ってまで国外展開することを避けてきたのではないでしょうか。