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【ビジネススキル】 未来戦略のススメ
(第1回)今日の経営と未来の経営
~未来は来るものではなくて自ら創るもの~
目先にとらわれず種まき
未来戦略とは「企業や事業の未来を描き出し、その実現のための効果的・戦略的なアプローチを構想すること」です。未来戦略の最も基本的な考え方は「未来は来るものではなくて自ら創るもの」ということです。未来戦略のねらいは時代の変化に対して受身的な経営をするのではなく、能動的、先導的な経営をすることにあります。
未来戦略を経営活動で応用するために、「今日の経営」と「未来の経営」という視点で考えてみましょう。「今日の経営」とは、短中期(3年程度)のビジョンにそって経営戦略を立案・展開・実行することです。一般には、現在の事業の成長戦略や競争戦略・収益力強化戦略が中心になります。
それに対して「未来の経営」とは、中長期(3年~10年程度)のスパンで考える経営です。自社なりの高い志や戦略的意図を起点に、新たな価値の創造や新規事業開発を構想・開発することです。未来への種まき、未来の準備を進める経営活動です。
今日の経営と未来の経営は、どちらか一方が重要だということではありません。企業活動においてはどちらも重要です。あえて、性格を分ければ、今日の経営は「合理的思考法」「左脳的思考法」が要求される経営です。一方で未来の経営は「デッサン的思考」「右脳的思考法」が要求されることが多いでしょう。
「今日の経営」と「未来の経営」を有機的に融合した経営スタイルを「未来戦略経営」と呼ぶことにします。この経営スタイルは、FMICが多くの先進企業との共同研究のなかから体系化したものです。FMICでは先進企業80社に対する実態調査を2009年に行ないました。そのなかでは「未来戦略経営が実現している」との回答は12%しかありませんでした。
厳しい経営環境が続くなかで、企業活動は、ともすると「今日の経営」や「目先課題対応」に忙殺されがちです。しかし、失われた10年と言われた1990年代にも、着実に未来準備をした企業は多数あります。そのような企業が、21世紀初頭の勝ち組になりました。
未来戦略経営における「未来」とは、単なる夢物語や時間的な未来ではありません。事業発展のための可能性発掘と実現のための行動改革を意味しています。日本企業は優れたポテンシャルを持っています。しかし、ともすると、目先の問題つぶし重視になりがちです。経営者やマネジャーには「未来からの思考」が求められます。未来からの思考で、能動的に未来を描き、行動を変えることで新たな成長を図ることができるでしょう。
「未来」というと「それは時期尚早だ」「まずは足元固めだ」という声が上がります。一見、もっともです。しかし、変化の激しい時代においては、それが最もリスクの高い選択になっていないかを考える必要があります。
次回以降、未来戦略経営の実践モデルにそって、戦略立案のためのツール(フレームワーク)を紹介していくことにします。前半では今日の経営の質をあげるための基本ツールとして「PPM」「差別化戦略」「SWOT」「5フォース」「競争地位戦略」に触れます。後半では未来の経営の基本ツールとして「ブルーオーシャン」「SHINKA戦略」「未来日記」「バリューイノベーション」「創発的戦略」について紹介します。
〔FMIC: フューチャーマネジメント アンド イノベーションコンサルティング〕