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未来戦略シナリオ

 

【ビジネススキル】 未来戦略のススメ

(第5回)戦略ポジションでベクトルを合わせる
~戦略方針の重点化と仕分け~

企業の位置付け明確に

未来戦略を検討するうえで「戦略方針の重点化」が必要になります。そのための基本的な考え方が「戦略ポジション」です。米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱しました。

戦略ポジションとは、自社が関係する業界構造の中で、自社を明確な場所に位置づけるものです。例えば、コーヒーを飲む場合を考えてみましょう。ドトールコーヒーとスターバックスでは狙っている顧客層や商品構成が違います。名古屋を中心に展開をしているコメダコーヒーはお店や接客の工夫で成長しています。

ポーターの3つの基本戦略

このように、同じ業界にいても、個々の企業が異なる戦略をとることは可能です。その具体的な方法について、ポーターは「3つの基本戦略(Generic Strategies)」を提示しています。3つの基本戦略は「対象の広さ」と「提供価値」のマトリクスで表現されています。

一つ目は「コストリーダーシップ」です。広範な市場に対して、コスト面で優位にたつための一連の活動を展開することです。そのためには、価格政策・ローコストオペレーション・生産量の拡大等の手段を継続的に実施する必要があります。

二つ目は「差別化戦略」です。差別化戦略は「差異化」とも言えます。業界のなかで特徴的な何かで、顧客に認知してもらうアプローチです。製品設計・サービス・ブランド等により、顧客価値の向上をはかります。

三つ目は「集中・フォーカス戦略」です。これは、特定のセグメントの顧客・製品・サービス・地域等に企業資源を集中するアプローチです。 いずれの基本戦略にしても「あまりにあたりまえ」のことです。しかし、戦略方針を定め、そのための活動システムを構築し、それを継続的に実践し続けることこそが戦略ポジションの要です。最近、独フォルクスワーゲンと資本提携をして話題になったスズキ自動車の例でみてみましょう。

スズキは軽自動車専業といってもよい存在です。1978年に"全国統一価格47万円"の衝撃価格で初代アルトを発売しました。以降、軽自動車は市民生活の足として市場が拡大しました。さらに最近はエコカーとしての地位も確実にしています。

スズキは、国内市場だけではなく、1980年代からインドに進出しました。今では50%以上のシェアを持っています。これら一連の活動の基本となったのが製品カテゴリーの「集中戦略」、生産面の「コストリーダーシップ戦略」、商品面の「差別化戦略」であると言えます。基本戦略を継続的に30年以上にわたって実践してきたのです。

このように、戦略ポジションとは、単に紙の上の話ではなく、継続的実践のうえになりたつものです。そこがSWOT分析等の戦略分析ツールとは決定的に違う点です。国内自動車市場が急成長した1970年代にも、あえて「軽自動車」に特化し、コストダウン技術を磨き続けたスズキの「決断の勇気」や「継続的実践」こそが戦略ポジション論の要点です。

未来戦略を作成するために「戦略ポジション」の考え方を活かすためには、自社の事業戦略を「自分ごとで真剣に見直してみる」ことをおすすめします。日本企業の事業戦略は総じて総花です。「国内も海外も!」「低価格化対応も新規商品も!」「あの市場もこの市場も!」等。

自社の事業戦略を「戦略ポジション」の考え方で見直してみることで、未来戦略のヒントや戦略方針の重点化・仕分けをはかることができます。

〔FMIC: フューチャーマネジメント アンド イノベーションコンサルティング〕