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未来戦略シナリオ

 

【ビジネススキル】 未来戦略のススメ

(第2回)プロダクトポートフォリオマネジメント
~事業仕分けで未来への力を獲得する~

投資優先順に”事業仕分け”

プロダクトポートフォリオマネジメント(以下PPM)とは、事業や製品群の現状を評価・検討するためのツールです。PPMは事業を2つの軸、「市場の成長性」と「市場地位(シュア)」で分析します。PPMは、自社内の複数の事業や製品群の優先順位や投資配分を考えるために使われます。

経営戦略の重要な役割は「事業の選択と集中」です。貴重な経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をばらまくだけでは効果は薄いでしょう。最近、多くの方が目にした「事業仕分け」も、事業の選択と集中です。既存事業の成熟化が進むなかで、多くの方々が事業や製品の選択と集中の必要性を感じておられると思います。PPMはそのような事業仕分けや選択集中をサポートするツールであり、考え方です。

プロダクトポートフォリオマネジメント

例えば、GEでジャック・ウェルチが、「世界で1位か2位になれない事業からは撤退する」と主張した話しは有名です。直近では東芝がエネルギー・原子力分野に重点的な投資やM&Aを行なっています。富士通はハードディスクメディア事業を昭和電工に譲渡しました。その一方で昭和電工は機能性高分子コンデンサ事業を村田製作所に譲渡しました。また、ある中堅のお菓子会社では、問屋ルートをすてて、直販ルートに特化することで高成長をとげています。

ポートフォリオという言葉は、一般には、保有有価証券の最適な組合せをあらわしています。PPMは、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によって、1960年代に開発されました。今では、様々な応用編が発表されています。以下には、基本形である4セルマトリクスについて述べます。

PPMの第1段階は主要事業の定義です。PPMにおいてはSBU(Strategic Business Unit)と呼ばれます。SBUは、事業部・事業部内の製品群・ときには単一製品で定義されます。重要なことは、SBU自体の大小ではなく、経営上の明確なミッションをもつ単位で考えるということです。

PPMの第2段階は各SBUの「市場成長率」「市場シュア」の調査です。市場成長率は対象SBUの年間成長率を調査します。市場シュアは相対マーケットシュアという概念が使われます。相対マーケットシュアとは、対象SBUの最大の競合他社との相対的シュアです。相対マーケットシュアは一般には対数目盛で表示されます。 第3段階は4セルマトリクスの作成です。第2段階で準備した各SBUの現状に応じて、4セルマトリクス上にSBUをマッピングします。ここで、丸の大きさは一般には対象SBUの事業規模を示します。各セルには「問題児」「花形」「金のなる木」「負け犬」という名称がつけられています。これは、事業のキャッシュアウト・キャッシュインの様子を表した名称です。

第4段階はPPMの本来の目的である、事業の事業仕分けです。「拡大」「維持」「収穫」「撤退」等の戦略方針を検討します。とは言え、事業や経営は生き物です。PPMには、担当者の思い入れ、技術、事業間のつながり等の質的な情報を含んでいません。PPM単独で重点投資の判断ツールにするには無理があります。しかし、シンプルなデータで迅速に全体像を把握できるPPMは戦略検討の初期段階の必須ツールと言えます。

戦略スタッフがPPMを活用することは当然です。しかし、未来戦略経営の観点からは、事業責任者や開発担当自ら、関連分野のPPM作成をおすすめします。自らの事業を客観的に見てみることで、現在事業の発展のヒントが見つけられます。さらには、中長期的にどんな分野を捨てて、どんな分野に集中すべきか、という未来の経営への準備にもつながるでしょう。

〔FMIC: フューチャーマネジメント アンド イノベーションコンサルティング〕