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【ビジネススキル】 未来戦略のススメ
(第11回)それぞれの産業革命
~未来革新年表で維新を考える~
「革新年表」で変化つかむ
事業を産業レベルの変化の流れで考えてみるツールが「未来革新年表」です。未来革新年表とは、自社の産業分野を過去・現在・未来の見方で自分なりにまとめるものです。
最近は、多くの調査会社や団体が未来年表や未来ロードマップを紹介しています。しかし、未来戦略の立案にあたっては、オリジナルな未来革新年表を作成することをおすすめします。「未来は来るものではなく自ら創るもの」だからです。未来革新年表の「革新」にはこのような意味を含んでいます。
例えば、一例として「携帯電話産業」の発展過程と未来を30年単位でみてみましょう。携帯電話の原型である自動車電話は1946年にアメリカで実験が始まりました。しばらくは消防等の特定用途で使われました。その過程で技術方式や小型化が進みます。この段階は「技術開発期」です。
次の30年は「市場創造期」です。本格的な個人用携帯電話が1980年頃から使われ始めます。いつでもどこでも使える携帯電話はあっという間に世界に広がります。機能やデザインが進化し、さらにデジタル技術革新により、いまでは、情報端末としての役割を不動のものにしています。
では、2010年からの次の30年はどんな時代でしょうか?携帯電話産業にとっての次の30年は「価値革新期」です。広い意味の社会インフラ(基盤)としての役割が重要になってきます。情報端末としての役割はもちろんですが、個人生活のさまざまなサポートツールになります。安全安心機能も大幅に進化するでしょう。携帯電話が「携帯電話」ではなくなるということです。
そのような価値革新期を先導するためには、単にハード・ソフト開発ではなく、使い方文化に踏み込んだ商品やサービス開発が重要になります。そのための取組みが多くの挑戦的企業で始まっています。日本企業は携帯電話産業において、最近は世界の潮流から受身に回ってきました。しかし、次の時代に「価値革新期」を先導することができれば、再び、大きな貢献をすることが可能です。
このように未来革新年表の作成にあたっては「大きな時代区分」と「変化視点」の設定が必要です。未来は見えないという人がいます。確かにそうでしょう。未来を予測することはできません。しかし、自分たちが想いをもつ領域については「自分達が一番の専門家だ」という意識にたって、未来を考察することが重要です。
未来革新年表の作成は一見、大変な作業に見えます。しかし、一人で取組むのではなく、チームや他の専門家との共同作業でやることで、知の創発が進みます。未来革新年表によって、頭の中でぼんやりと考えていた未来へのトレンドがビジュアル化されます。
幕末の動乱期に「開国」や「新しい日本」に夢と行動をかけた若者たちが明治維新を実現しました。産業の大変革期の今、私たち一人ひとりが、時代の変化をつかみ、維新の志を持つことが、それぞれの産業革命の波を作り出すでしょう。各産業分野の変化を30年くらいのレンジでとらえなおして、次の時代に踏み出すことは未来戦略の始まりです。
〔FMIC: フューチャーマネジメント アンド イノベーションコンサルティング〕