- 未来づくりの知恵袋トップ
- 出版物 技術資料
- 記事・投稿
- 未来戦略のススメ
- ドイツ企業にみるグローバル化成功のカギ
【ビジネススキル】 未来戦略のススメ
(第9回)未来日記で創造性を刺激する
~未来から未来を振返る~
成功のイメージ具体的に
未来日記法は、多忙な企業活動のなかでも、未来ついて考えるためのツールのひとつです。当社が主催する未来開発ワークショップのなかで開発されてきました。未来日記とは、事業や商品の将来のありたい姿を具体的に考えてみるための道具です。「事業の将来像」「実現プロセス」「成功要因」等を簡単な絵や文章で表現します。
通常、日記は過去のできごとを書きます。しかし、未来日記は、未来のある時点にたって未来の振返りをすることが特徴です。例えば「2020年、我が社の**商品が地球温暖化対策に活躍している」「その実現過程を振返ってみると**である」「その成功の要因は**である」等です。
経営戦略やマーケティング戦略の世界では、各種の分析ツールが発達してきました。「市場を分析する」「競合を分析する」「社内資源を分析する」「財務状態を分析する」等です。これらは、すべて、過去や現在を対象にしています。
過去や現在の状態を分析することは大切ではありますが、未来が見えるわけではありません。最近では、行き過ぎた実証主義経営に対して異論をとなえる経営学者も現れてきています。事業活動は、本来、創造的なものです。未来日記は、事業活動における未来を自分ごとで描き出してみるための道具です。
未来日記の検討ポイントは3つあります。ひとつめは「現状の問題ではなく、将来の成功イメージを描くこと」です。小学校の卒業文章に「私はオリンピックに出ます」と書いた少女が、今年の冬季オリンピックで大活躍しています。
ふたつめは「将来の実現イメージに至るプロセスを考えること」です。これは未来の実現イメージを考えるだけでは「夢が夢」で終わってしまい、行動に移せないからです。
みっつめは「成功要因の考察」です。これによりどのような点が目標実現のための重点であるかが発見できます。
個人で作成した未来日記をチームで討議する場を「インサイト(洞察)ミーティング」と呼んでいます。インサイトミーティングには3つのルールがあります。「質問は自由」「感動や良い点を発見する」「次に向けた提案をする」の3点です。各人が考えたぼんやりした未来像を皆で創発議論し「次の一手」を洞察します。
未来日記の活用法をみてみましょう。100年近い伝統があるA機械メーカーでは、未来戦略立案にあたり、まずは、経営陣自らが未来日記を書くことになりました。従来はともすると、経営陣は「指示者」でした。しかし、未来開発ワークショップのなかで、経営陣自らが未来日記を書くことで、組織に変化が起こりました。ビジョン・中期計画といった方法だけでなく未来日記を通じてリーダー個人の想いや情熱を共感できたからです。これに触発されて、各職場で未来議論が活発化し、A社では次の100年に向けた活動が開始されています。
未来日記はチームはもちろんですが、個人でも活用できます。新年度計画や中期計画の立案にあたり、未来日記を作成し、職場の皆でワイガヤをしてみたらどうでしょうか?
〔FMIC: フューチャーマネジメント アンド イノベーションコンサルティング〕