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未来戦略シナリオ

 

【ビジネススキル】 未来戦略のススメ

(第6回)市場における競争地位戦略
~ニッチャーからフロンティアへ~

挑戦的ニッチ企業を手本に

未来戦略を検討するうえで「市場でどのような戦略をとるか」が重要になります。そのための基本的な考え方が「競争地位別戦略」です。マーケティングの世界的権威といわれるフィリップ・コトラーによって提唱されたものです。

競争地位とは、市場における役割や地位に応じた企業分類です。コトラーは4つの分類として「リーダー」「チャレンジャー「フォロワー」「ニッチャー」を定めました。4つの類型は、市場戦略や商品開発戦略を検討する場合の共通言語としてよく使われます。ネーミングを含めて、誰でもよくわかる概念定義だからです。

ここで、リーダーとは市場シェアがトップの企業です。通常、多くの品揃えをもち、価格・新製品・標準化・プロモーション等で他社をリードします。業界全体の発展に貢献する役割もはたします。

4つの競争地位別戦略

チャレンジャーとは市場において2番手企業といわれる存在です。1社ではなく複数社の場合もあります。独自の製品や価格戦略により、リーダー企業に対して積極果敢に挑戦します。結果として、市場の活性化に貢献します。

フォロワーはリーダーやチャレンジャーの模倣戦略をとる企業です。模倣というと聞こえは悪いですが、単なる模倣ではなく製品の改善や独自の工夫を含みます。迅速な開発力等が鍵を握ります。

ニッチャーは大規模市場ではなく小規模市場を選択します。大きな企業にとって利益が出にくい小規模市場をターゲットにすることで競争を回避します。ニッチャー企業のなかには、自ら特定の市場をつくり、その分野では世界的リーダーになる道を選ぶ企業が存在します。ここではあえて「フロンティア(開拓者)」と呼ぶことにします。

未来戦略的には「フロンティア」に焦点をあててみましょう。フロンティア企業の例として、ドイツの業務用洗浄機器メーカー、ウィンターハルター(WH)社があります。WHはホテルや高級レストラン向けの食器洗浄機に特化した企業です。「洗浄機を作る会社」ではなく「ホテルに清潔なグラスと食器を納入する会社」に戦略特化。洗浄ノウハウ・機械・水・保守サービスを提供することで、顧客満足が向上、世界シュアは2%から20%に向上しました。

イタリアの暖房機器・調理機器の専門企業であるデロンギ社は「オイルヒーターのシェア世界No.1」です。様々な暖房機器があるなかでオイルヒーターの「安全性」「環境性能」「イタリアンデザイン」にこだわった商品が世界の人々に支持されています。

テープやフィルムで世界的企業になった日東電工は「グローバルニッチトップ戦略」を推進しています。粘着技術・高分子技術を核に液晶用光学フィルム等、20製品以上で世界シェアNo.1を獲得しています。その多くは液晶テレビや携帯電話等のハイテク分野で使われています。

このように、ニッチではあるが、挑戦的な企業がフロンティア企業です。フロンティア企業は、市場は世界をみつめつつ、特定の製品やサービスで存在価値を発揮します。価値観が多様化する成熟社会においてはフロンティア企業の役割が重要になります。シェア等の量的な見方からの市場戦略ではなく、新たな市場を切り開くという視点からの戦略が重要になります。

〔FMIC: フューチャーマネジメント アンド イノベーションコンサルティング〕