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創造性を高める経営 インタビュー: インターナショナル・マネジメント・アンド・イノベーション・グループ
プレジデント M.ハートマン氏 Dr. Matthias Hartmann

聞き手:堀田佳男

世界経済は激震が走り、2009年を迎えてもその先には暗雲が立ち込めている。だが、いつの時代にあっても、事業の創造と新製品の開発は生き残りの要件であることに変わりはない。ヨーロッパを中心に企業の新事業開発などの経営支援を行うIMIG社のCEOハートマン氏に創造性を高める経営のあり方を聞く。

ドイツ企業にみるグローバル化成功のカギ
フューチャーマネジメントで世界進出に挑め (4)

伝統的なマネジメント・ツールにこだわるな

そうした背景から、私どもは「次世代経営教育プログラム」を始めたのです。近年、以前にも増して未来予測が難しくなっています。ある企業が製品を市場に導入し、最大シェアを奪ったとしても、まったく予想外のライバル企業が突然登場することもあります。

これまで国内需要だけに頼り、グローバル市場に関心を示さなかった中小企業も国際化の波にさらされています。今後もグローバル市場に進出するつもりのない企業も多いかもしれませんが、地球の反対側で起きたことが日本の国内企業の将来に大きな影響を与えるのが21世紀です。

原料価格の高騰などによって、国内製造業者が多大なコスト高に見舞われています。こうした国際的な出来事に対して周到な準備をすることがフューチャー・マネジメントなのです。これからは、時代の流れに合わせてメソッドとツールを変えなくてはいけません。10年前に成功したツールは、すでに機能しなくなっている可能性が高いのです。

私の経験から確実に言えることは、新製品を新しい市場に導入すると失敗する確率が高いということです。つまり、新製品を開発したら、既存の市場でまず試してみるか、既存の製品を新市場で試してみるかなのです。

フォルクスワーゲンは中国市場で大成功を収めてきました。ただ、10年前と同じタイプの車を変化の激しい中国市場で売りつづけたため、ここにきて売上を 75%も落としました。企業は時代の波に乗りながら意思決定をする必要があるのです。しかも分野によっては数週間ごとにビジネスの方向性を起動修正しなくてはいけません。

ということは、新製品の製造期間が10年前より確実に早いということです。同時に、トップはリスク・マネジメントに精通する必要があります。過去10年間の傾向をみると、アウトソーシングをはじめとするコスト削減目的で新興国市場に参入した企業は、軒並み失敗しています。進出した市場をトータルで理解していなかったためで、リスク・マネジメントが甘かったのです。製造・販売両面で、新興国の流儀に適応させたメソッドとツールを持たなかったのです。単に安価な労働力を求めるだけでは、成功は出来ません。

製造業者がグローバル化を考えるとき、企業マネジメントをパッケージで捉える必要があります。進出国での原材料、研究・開発、製造、販売への精通度は、国内と同じレベルでなくては成功しません。グローバル化はすでに必然ということを念頭に置いてください。

しかし、世界市場はリスクよりもはるかにチャンスのほうが多いのです。ですから冷静に市場を分析し、果敢に攻めてください。多くの優良な日本企業のおかげで、日本の製造業は世界のブランドになっています。どこへ行っても日本製への信頼は確立されていますから、この好機を逃す手はありません。いま世界市場に出ていかない企業は失うもののほうが大きいでしょう。

伝統的なマネジメント・ツールとメソッドにこだわっていてはいけません。海外で成功している企業が何をしているのか、学ぶ柔軟性が必要です。グローバル化に挑む勇気を持ってください。