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創造性を高める経営
インタビュー:
インターナショナル・マネジメント・アンド・イノベーション・グループ
プレジデント M.ハートマン氏 Dr. Matthias Hartmann
聞き手:堀田佳男
世界経済は激震が走り、2009年を迎えてもその先には暗雲が立ち込めている。だが、いつの時代にあっても、事業の創造と新製品の開発は生き残りの要件であることに変わりはない。ヨーロッパを中心に企業の新事業開発などの経営支援を行うIMIG社のCEOハートマン氏に創造性を高める経営のあり方を聞く。
ドイツ企業にみるグローバル化成功のカギ
フューチャーマネジメントで世界進出に挑め (3)
「改善」の意識が欠点にもなる
BRICsはいまでも新興市場として注目されています。安い労働力を求めてBRICsに工場建設をしても、撤退を余儀なくされた企業は相当数に上ります。単に製造するだけでなく、進出国の市場で製品を効率的に販売し利益が得られなくては、持続的成長はありません。
さらに、タイミングも重要です。インド市場か中国市場のどちらかにするかといった判断は、市場を多角的に分析したうえで決定します。その市場での商品の飽和性も大切です。
日本の国内市場は、国際化の波にさらされていますが、産業界の底力は強く、需要も十分で、社員には改善意識もあり、絶え間ない前進の精神が宿っています。しかし世界市場では、これが欠点になることもあるのです。
他国ではインセンティブを与えないと社員は同じ業務を繰り返すだけなのです。国が違えば歴史が違い、文化が違います。ですから日本と違う価値観の国がほとんどであり、組織への思いもリーダーシップの取り方も違うことを理解しなくてはいけません。多くの日本人マネジャーはこの点で戸惑います。現地に派遣され、慣れるまでに数年を要することもあります。
たとえば、日本と中国は同じ東アジアの国ですが、会社への忠誠という点では対極に位置しています。いまでも日本では一つの企業に長期間、時には定年まで勤務する文化があります。ですから組織は人材に投資できます。社員訓練を施し、長期計画を実施できます。一方、中国では一ヶ月に転職を2度することもあります。有能な人材が多数いるので引き合いも多く、別の企業から年俸の10%増を提示されると、瞬く間に転職してしまいます。そのため、社内訓練に多くのコストをかけていられません。
社内訓練が悪いわけではありません。場合によっては必須です。ただ、社内訓練を受けた場合、3年間は転職を禁ずる契約を交わさせる手法などを採用すべきです。それでも転職する場合は、転職先の企業が訓練コストを肩代わりする契約にすべきです。これが中国でのビジネス手法の1つです。ですからビジネスのメソッドとツールの違いを理解し、実践しなくてはなりません。これは初歩的な一例です。中国だけでなく、各国で同様な事例があります。大企業であれば国別の差異に対処できるかもしれませんが、中小企業では容易ではありません。
もう1つがサプライヤーとの関係です。日本ですと、大企業傘下の信頼できるサプライヤーが一緒に海外進出をする事例も多いのですが、製造業者が海外市場に進出したとき、地元のサプライヤーとの関係を構築する必要があります。海外で日本のような系列化されたシステムを採用することは難しく、長期的な契約関係を築くことのほうが珍しいのです。